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下賜の盃

下賜の盃
幕府は朝廷に福の参内(さんだい)を強要した。彼女が参内した寛永六年(一六二九)十月十日、公卿の西洞院時慶(ときよし)はその日記に、「稀代儀也(きだいのぎなり)」と、ふきこぼれるような不快をこめている。幕府としては、福という庶民を参内させることによって、公家の誇りをくだくつもりだったのだろう。福その人にどんなつもりがあったのかよくわからないが、彼女にすれば、江戸城大奥における自分の権勢と才覚をもって天皇をひるがえしてみせる自信があったはずである。が、さすがの彼女も、宮中の儀礼には、歯が立たなかった。参内したものの、みかどは御簾(みす)のかなたにあり、彼女からことばを発することもできず、そのうち長橋の局(つぼね)という者がすすみ出て、下賜(かし)の盃というものを福にとらせた。

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福が、天盃に唇をつけると、儀式はそれでおわった。結局、みかどは福の強行参内によって幕府への積年の憤りを爆発させ、ほどなく譲位した。福の強行参内はむしろ朝幕の間を冷えさせただけでおわった。(「本郷界隈 街道を行く37」 司馬遼太郎) 福は、徳川家光の乳母・春日局、退位したのは後水尾天皇。幕府がその権威を示すために、宮中から紫衣(しえ)を許された禅僧たちに対しそれを無効とし、抗議した沢庵禅師らを流刑にしたため、後水尾天皇が退位することを宣言、驚いた秀忠が送り込んだのが福だそうです。

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2008年04月17日 23:27に投稿されたエントリーのページです。

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